高須城日記V(夏中編)
(平成十八年度・棚田オーナー/福井市 藤田幸治)
【六月の十四/週末の・・・約束!】6月25日(日)
九州や四国をはじめ、太平洋側では大雨の警戒となっているのだが、福井では降るでもなく、晴れるでもない北陸特有のはっきりしない「ぐずついたお天気!」と、なっている。
朝、その空を眺めては「今日はお天気になるのかな?」と、心配顔の次男(小6)。「今日は・・・相撲大会だろ?」と、聞いた私だが、「順化のグランドであるのか?」の質問に「ううん!武道館だよ」と、答えた次男(屋根付きだから天気は関係ないじゃん!)。
次男の毛虫(チャドクガの幼虫)による発疹も、どうにか治まりこの日の相撲大会に間にあう事になった(上半身を裸で戦う相撲大会、赤い斑点があれば、相手に失礼だから・・・あっ!でも、斑点があった方が「気持ち悪い!」と、勝てるかもね?!)。
そんな事を考えている朝、「お父さん・・・行って来ます!」と、次男は付き添いの妻と共に、元気で武道館へと出かけて行った。順化小学校の代表として恥ずかしくない取り組みをして欲しいと願う私だが、何故か相手に優しい次男の性格、「全敗かな?」と、朝のコーヒーを飲みながら思う私であった(何故、次男が代表なんだろう?)。
そんな次男が昨日の夕方に、
「お父さん、高須の田んぼに行こうよ!」と、突然言い出した。
「いいけど・・・何で?」と、聞き返すと
「あのね・・・今の時期の稲の成長を見たいから!」と、答えたのだった。
「じゃ・・・明日の相撲大会で勝ったらね!」と、次男にとって微妙な約束をした私。
それでも「わかった!」と、頷く次男(こいつ、勝つ自信があるのか?!)。しかし、次男の心の中は読めている私。次男は稲の成長よりも高須町の佐々木さんの子供さんたちと遊びたいのだ。長男が名古屋に行き、我が家の次男は現在ひとりっ子状態となっている(きっと、寂しいのだろう!)。そんな次男の顔を見ながら「勝って来いよ!」と、願う私だった。
この数日、何か気の晴れない毎日となっているのだが、その原因は・・・ブラジル戦で完敗となったジーコ・ジャパンだろう。23日の朝4時からの試合。私はその2時間前から起きだしてテレビの前で一人サポーター態勢を取っていた。
「ダメだろう!」とは思いながら、それでも「奇跡は起こる!」と、信じていた。ジーコ・ジャパン4年間の集大成となるこの試合、しかし決勝トーナメントへの道には条件がある。ブラジルに2点差以上を付けて勝つ事。また、別会場で同時刻で行われるオーストラリア対クロアチアが引き分けるか、クロアチアが僅少差で勝つ事だった。
自室のテレビを2画面にした私。日本対ブラジル(画面大)・オーストラリア対クロアチア(画面小)を設定し準備万端整えてキック・オフの笛を待っていた。ほぼ同時刻に試合は始まった。「頑張れ・・・頑張れ・・・」と、心の中で叫ぶ私。そんな私を他所に、妻と次男は・・・・・熟睡中(君たちには応援しようとする、日本人の心が無いのか!)。
そして、前半の最初に動きがあったのはオーストラリア対クロアチアだった。先取点を入れたのは何と、クロアチアでこの時、「やった〜」と、叫んだ私。そして、日本は玉田の豪快なシュートがブラジルのゴールネットを揺らした。この時までは、全て日本チームの予選突破となるシナリオ通りだった。前半ロスタイム、ブラジルの不調と言われたロナウドの同点ゴールが決まった。「守れない日本」が再び姿を現した時だった。それでも、奇跡は起こることを信じ応援する私。妻も寝室でテレビを見ていた(寝ながら!)。
後半は・・・・もう・・・書きたくない。1対4、予選2敗1分け。このスコアが、この結果が全て今の日本チームの世界での実力を表していた。4年後までにはどうなる日本チームのレベル。いや、もうすぐアジア予選(8月)が始まるのである。新監督、新メンバーで再び世界に挑戦する日本チーム。その道のりは決して楽なものではないが、スポーツの基本・・・まずは・・・走ることから始めてほしい!
のんびりと日曜日の時間を過ごしていた私。テレビとパソコンと交互に楽しんでいた。そうそう、当然FBC川島秀成アナウンサーの朝の番組も見ましたよ(かるたでしたね!)。
次男と妻が相撲大会から戻るのは夕方だと聞いていた私。それでも午後になると、着替えをして出かける用意を始めたのだった。そして、一緒に出かける田中先生からの電話を待っていた。この日の行き先は・・・高須町ではなく・・・県の産業会館だった。前日、その田中先生からの電話で「もし、お時間があれば付き合って下さい!」と先生からのお話に「いいですよ!」と、約束をしていたのだった。しかし、県の産業会館で何のイベントがあるのか聞いていない私だった(まあ・・・いいか!)。
その田中先生だが、昨日の土曜日に・・・面白い(失礼!)事があったと聞いた。少し・・・いや・・・全部暴露すると、土曜日の午前中だが明道中学校に休日出勤した田中先生(先生は忙しい!)。しかし、この日の午後からは、家族サービス(お嬢さん(高1)と映画を見に行く約束をしていた)があったらしい。学校では、週明けの月曜日から生徒たちの定期テストが始まることになっているが、ここで重大な問題が発生!生徒たちに定期テスト前の練習問題を渡せなかったことに気づいた田中先生。「これは・・・大変だ!」と、1クラス分のプリントを手に自転車をこぎ出したのだ。
しかし、1クラス分と言っても・・・そこはかなり広い明道中学校の校区。生徒一人一人の家に訪問してのプリント渡し・・・どんどん時間が過ぎて行く。そして、とうとうお嬢さんとの映画の約束を諦めた田中先生、映画館の前で先生を待つお嬢さんに電話で謝ったらしいのだ(可哀相なお嬢さん!結局・・・映画館には、田中先生の奥様が急遽・・・お出かけになったとか!)。
自転車のペダルをこぎ、想定外の土曜日の家庭訪問をする田中先生・・・全ての生徒のお宅を訪問し終えた時には・・・夕方になっていたという(ご苦労様でした。でも、いい運動になったかもね!)。この話を聞いた私は「FAXで送ればいいのに!」と、言うと「そうですね、その手がありましたね!」(冗談です!)と、微笑む田中先生だったのだが・・・こんな田中先生の休日の汗まみれの姿を、生徒が心で受け止め、先生と生徒たちとの固い絆ができていくことだろう。
午後2時、田中先生の運転する車の助手席に腰を下ろした私。
「すいません・・・お休みなのに」と、挨拶をする田中先生の顔や手は昨日の校区内サイクリング?で・・・・日焼けをしていた。産業会館に向かう車中では、その土曜日の経緯や高須町の事で話しが盛り上がる田中先生と私。
「昨日は大変でしたね・・・先生!」
「いや〜参りました、でも生徒たちの事を考えると・・・あれぐらいは・・・!」と、田中先生(いい話や〜!)。それでも
「娘と生徒とどちらが大切なの!」と、私が聞くと
「・・・・」の先生だった(何と言う質問だ!)。
県産業会館・・・久しぶりに来た。昨年の11月26日に行われたFBCフェスタ「ふくい食のめぐみ祭」【十一月の十二】以来だった。しかし、本日のイベントだが・・・何と、「シャープ、グランドフェア」と、なっていた。「田中先生何か買うのかな?」と、思いながらその田中先生の後に付いて会場に入った私。
会場入り口には受付があり、来場者名簿に名前を書いた私。田中先生と会場内に入ろうとすると「先生ようこそ!」と、田中先生のお知り合いの電器屋さんが顔を出した。とりあえず私も挨拶を行い、会場内に足を踏み入れた。入り口には・・・懐かしい昭和30年代の家電製品のパネルが並んでいた。白黒テレビ・洗濯器(手動の脱水器)・初期の冷蔵庫。「懐かしい!」と、思わず声をあげた私。すると、田中先生も「昔はこんなのありましたよね、どこの家庭でも・・・」と、そのパネルを見て立ち止まっていた。
パネルを過ぎると新型の冷蔵庫や洗濯器、そしてエアコンなどが並んでいた。しかし、会場内で一番目を引いたのは大型のCSデジタルフルハイビジョン液晶テレビだった。大きさも色々で26型・32型・45型と並んでいる。そして、会場ほぼ中央にある65型には・・・目を奪われた田中先生と私。「綺麗・・・」の後の言葉さえ出てこない二人だった。おりしもその画面ではワールド・カップが映しだされていて、ピッチのグリーンが鮮やかな輝きを放っていた。しばらく無言の二人だったが、その65型の気になる値札を見たのだった。「えっ〜!・・・・1,480,000円・・・!」と、またまた無言になる二人(因みに特別価格だそうです!)。
会場内中心部には、各電器屋さんごとにテーブルと椅子が用意してある。このテーブルだが招待したお客様の休憩所でもあり・・・購入の契約場所ともなるのだ。田中先生と私は、その椅子に腰をおろしていると、そこの電器屋さんが「コーヒーをどうぞ」と、運んで来た(サービスがいい!)。
すると、またその電器屋さんが、今から会場内で始まる「ビンゴゲーム」のカードを先生と私に手渡したのだった。会場正面では司会の女性がマイクを手に「只今からビンゴゲームを始めます。本日、五千円以上をお買い上げか、ご契約の皆様にカードをお渡ししております!」と、説明をしている(先生と私は、何も買ってはいないし・・・契約もしていない!)。
「いいのかな?」などと考えていると、いよいよビンゴゲームが始まった。番号がアナウンスされる度に「よし・・あった!」「いいぞ!」と、興奮気味の・・・私たち二人(おい、おい)。景品はさすがシャープ、高価な物が並んでいる。どんどんと呼ばれる番号だが、会場内からは中々、「リーチ!」「ビンゴ!」の声が聞こえてこない。私も田中先生もその手のカードは意外にもいい感じで穴が空いている。しかし、ここからが・・・長いのだ。続々と「ビンゴ!」の声で景品を受け取りに行くお客さん達。「本日は何をお買いになりました?」と、司会の女性の問いに「はい、テレビを・・・」とか「冷蔵庫を」と、答えている。この時私は、もしビンゴになった時に何とコメントしようか一応・・・考えていた・・・のだ。
ゲーム開始から15分、私が考えていたコメントは・・・無駄になっていたのだった(やっぱり!)。「まあ、こんなもんですよ、先生!」「そうですよね!」と、虚脱感が漂うビンゴゲーム終了時の二人だった。
そんな中、田中先生は何やら電器屋さんとひそひそ話をしていた。「おう〜、いよいよ高価なテレビでも契約しているのかな?」と、想像していた私だった。すると、向きを変えた田中先生が私の所へやってきた。「藤田さん・・・10分程度・・・お待たせしますがいいですか?」と、田中先生。「全然・・・いいですよ、ごゆっくり!」と、私。高価なテレビの購入・・・いよいよ値引きの交渉だなと考えていたのだった。「何インチのテレビを買うのだろう?・・・まさか65型・・・じゃないよな!」と、得意の独り言となっていたのだった。
田中先生と電器屋さんの話をしている前には、その大型65型のテレビがある。「すごいな・・・先生、あのテレビだったら全て込みでも150万はするだろう!」と、田中先生の男の器量に関心していたのだった(俺にはとても買う勇気もお金もないのにと・・・・少しの妬みモード!)。
しばらくすると、テレビの前から移動し出した先生と電器屋さん。「ついに・・・契約か!」と、思ったその時だった。今度は、テレビの前から徒歩約15歩の・・・電話FAXコーナーの前に移動した二人。その陳列棚の新機種を前に、田中先生は、あれやこれやと電器屋さんから説明を受けだしたのだ。
「えっ!」