赤いシクラメンの花
いわさきちひろ 『戦火のなかのこどもたち』より
赤いシクラメンの花は
去年もおととしもその前の年も
冬の私の仕事場の紅一点
ひとつひとついつとはなしにひらいては
仕事中のわたしとひとみをかわす
去年もおととしもその前の年も
ベトナムのこどもの頭の上に
爆弾はふった
赤いシクラメンの
その透き通った花びらのなかから
死んでいったその子たちの
ひとみがささやく
あたしたちの一生は
ずーっと戦争の中だけだったのよ
‥‥
赤いシクラメンの花が
ちってしまっても
やっぱりきこえない
わたしの こころのおともだち
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いわさきちひろは、1918年福井県武生市で生まれ、1974年に肺ガンで亡くなった(56歳)。 |
ちひろが好きだったもの ; "風のささやき 草木のにおい はなびらのやさしさ 赤ちゃんの肌 走りまわる子どもたち 遠くでひびく波の音・・・・それから つば広の帽子"
安曇野ちひろ美術館
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1996,12月末、正月休みを利用してベトナム戦争での枯れ葉剤被害児調査にベトナムの山岳地帯を訪問した(連れて行った次女とホーチミン市で記念撮影)。
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