歴史の学習室 #03 「さなぶりと稲荷信仰」
<はじめに>
昔は6月上旬から始まった「田植え」も、品種の改良や農作業の改良で、中部地方なら5月に終わることが多いようである。
さて、農作業が終わると、「田植え」が無事終わったことへの感謝と「豊作」を願い、お供えなどをして神様に感謝する催し事をしたものである。それは同時に、厳しい農作業を終えた喜びと共同作業へのいたわり合いもあったようである。それが「さなぶり」。
しかし、最近の機械化に伴う農作業の軽減化等や古き物を厭う時代の流れの中で、「さなぶり」そのものが行われ無く成りつつあるようである。
そこで、忘れない内に、「さなぶり」と「稲荷信仰」を纏めておこうと思う。
<農業の神様>
昔の人は、「自然の至る所に神様が居る。」と考えていたものである。勿論、農作業にも神様が付いていて下さると考えていたものである。農作業の神様は誰か?その神様は、「食稲魂命(ウカノミタマノミコト)」とか「食稲魂女(ウカノメ)」とか呼ばれる神様で、女性の神様である。
<さおり>
この神様が、「種まき」の始まる頃に天から降りてきて下さるのが、「さおり」である。「さ」は神様のことで、その神様が「降り」て来られるのである。
<さなぶり>
田植えなどの作業が終わると、神様は天に帰って行かれるのであるが、それが「さなぶり」である。「さ」は神様のことは言った通りで、「なぶり」は「のぼり」の変化したものだと言われている。
<稲荷信仰>
稲荷神社は、「さなぶり」の謂われに書いたように、「食稲魂命(ウカノミタマノミコト)」をお祭りしてある五穀豊穣の神様である。稲の収穫を見守ってくれるところから、「稲なり」と成ったのではないかと思う。
お稲荷様のお使いは「狐(きつね)」で、稲荷神社の前には「狛犬(こまいぬ)」の代わりに稲の穂をくわえた狐が居るのである。
稲荷神社の祭礼は2月の最初の「午(うま)」の日に行われ、「初午(はつうま)」と呼ばれる。特に有名なのは、京都伏見の稲荷神社で、会社を経営している私の義兄弟も、この日にお参りに行っているようである。
お稲荷様は、今では、農業の神様だけでなく、あらゆる産業の豊穣や商売の繁盛を叶えてくれる神様として、広く信仰されるようになっているからである。