パソコン学習室 #02 PC98シリーズの歴史
パソコンの知識が余り無い人でも分かるように書くつもりです。読んでいてあほらしい人は、読み流してやってください。間違っているところがあったら、掲示板やメールで教えてください。
私の家には、何台かのパソコンがあるが、その中でも、今や手間がかかって厄介者だが手放せない特別な品になったのは、NECの「PC9821V13」というパソコンであろう。
御存知かも知れないが、今から15年前の日本のパソコン界は、NECが牛耳っており、NECのPC9800シリーズのシェア(市場占有率)はもの凄く高かったのである。アメリカでは、アップル社のマッキントッシュというパソコンが人気を得ていたが、その話は横に置いておいて。
その頃のパソコンは、メーカー毎に基本設計(アーキテクチャー)が異なっており、その為、他のメーカーのパソコンでは同じソフトが動かない、と言うような現状であった。すなわち、ワープロソフトの「一太郎」でも、NECパソコン用の一太郎と、富士通パソコン用の一太郎などがあったのである。
辛うじて、エプソンという会社が、NECの了解を得て、NECパソコンで使うソフトでも使えるパソコンを作らせて貰っていたような訳である。
この時代のNECのパソコンは、PC9801と言うシリーズが中心であった。
処が、IBMという会社が、「DOSV」という基本設計のパソコンを作り、世界中にその基本設計データを公表し、「それを真似てパソコンを作っても良い」、と太っ腹なところを見せたので、世界中で色々なメーカーがパソコン作りに参入したのである。それが、IBM PC/AT互換機(Personal Computer/Advanced Technologies互換機)と呼ばれるパソコン群で、日本の家電メーカーのソニーや日立、パナソニックなどまでが作り始め、あっという間に世界で最も多く利用されているパソコンの種類になってしまったのである。
そのような状況の中で、NECはどうしたか?今まで日本のパソコン界NO.1のプライドがあるので、自社のパソコンを機能アップして、PC/AT互換機に負けないもの作って対抗したのである。それが「PC9821」シリーズである。
このころ、マイクロソフト社が、「Windows」というOS(パソコンを動かす基本となるソフトで、色々なソフトはその上で動いている)を開発したが、その便利さであっという間に世界中のパソコンに搭載されるようになったのである。便利な面はいっぱいあるが例を挙げると、今までのOSでは、ワープロソフトを使っていて表計算ソフトを使いたくなった場合、一旦ワープロソフトを終わらさなければならなかったが、Windowsではいくつものソフトを窓(ウインドウ)の様に一度に立ち上げて置いて、自由に切り替えながら使うことが出来たりするのである。
こんな便利な物を使えないとパソコンは売れないので、当然NECも、自社のパソコンにWindowsを入れて売り出したのだが、プライドの高いNECは、他のメーカーのパソコンでは使えないPC9821専用のWindowsを組み込んで売り出したのである。
この作戦は見事に当たり、私も含めてた旧来の「98」ファンは、NECのWinwowsマシーンを喜び勇んで買ったものである。
しかし、この様な状況は、長く続かなかった。世界の主流がPC/AT互換機になるにしたがって、パソコン周辺機器やソフトを作るメーカーが、PC/AT互換機でしか使えずNEC9821では使えない物を作るようになってきたのである。両方に対応する物を作る労力や費用を使いたくなかったのかも知れない。その結果、NEC9821パソコンは、世界の中で孤立し始めたのである。
NECは、ついに決断を下した。PC/AT互換機とほぼ同じパソコンを作って売り始めたのである。それが、「PC98−NX」シリーズである。
旧来の「98」ファンは、「とうとうAT互換機に負けたのか!」と悔しがり、NECは、「これは互換機ではない。あくまでもNEC独自の技術の賜だ。」と弁解し、「9821シリーズは作り続ける。」などと、虚しく聞こえるコメントを出したりした。
今では、「9821シリーズの資産を継承する」などの謳い文句で、申し訳程度に98パソコンを出しているが、それを買う人間なんて滅多に居やしない。
しかし、98パソコンを偲ぶ声は少なくない。それは、パソコンそのものよりも、98シリーズのために開発されたもの凄い量のソフトを勿体なく思うからである。それらの中には、今でもリメイクして欲しいソフトがいっぱいある。これこそ、98パソコンの資産と言えるものであろう。