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音楽は時間芸術と言われています。奏でられた音楽は、時間の経過とともに消え去ってしまうからです。ところで、私達は音楽を聴きたくなった時どうするでしょう。CD、MD、レコード、カセットテープ..数多くのメディアが私達のまわりにあり、どのような場所でも聴きたい音楽の再現が可能となっています。これは、人類の夢が具現されたもののように感じます。時間とともに消え去る音楽を封じ込めておくための人類の努力と、音楽に対する思いを手回しオルガンには感じられるでしょう。 古来、楽器を鳴らす動力源として、風(空気)の力が知られていました。古代ギリシャの時代にも、アルキメデスは水の力と空気の力を利用した楽器をつくったと言われています。中世には、ぜんまいのような機械仕掛けが発明され、円筒型の「シリンダー」に配置されたピンでハンマーを動かし鐘を打つ装置が作られました。教会の塔などにみられるカリヨンがそれで、現在もオランダでは数多く残っています。 自動演奏楽器のために音楽を記録する手段は、様々なものが考案されました。「シリンダー」を用いたシリンダー・オルゴールは、植えられたピンで金属片をはじいて自動演奏するものです。やがて、1枚の金属板から「櫛」のように歯を切り出す技術が開発されました。このとこで、シリンダー・オルゴールは自動演奏楽器としての完成度を高めました。 シリンダーオルゴールのシリンダーを作るには大変な手間と労力がかかりました。そこで、より多くの曲を手軽に楽しめるオルゴールが望まれ、シリンダーの代わりに金属のディスク(円盤)を使ったディスク・オルゴールが作られるようになりました。音を出す仕組みは、突起がつけられたディスクが回転し、その突起が櫛の歯を弾くというものです。 音楽をどこかに閉じ込め、いつでも好きな時に聴きたいという人類の長い間の夢は、手回しオルガンによりかなえられました。ハンドルでふいごを動かし、ふいごの風をパイプ・オルガンに送って演奏するのです。 最初の小型オルガンが作られたのは16世紀の中頃でした。18世紀から19世紀、そして20世紀のはじめにかけて、自動演奏楽器は音楽の大衆化とともに黄金時代を迎え、様々な自動演奏のオルガンが生まれました。自動や演奏の記録方法も多様化していきました。オルガンは3つのタイプに大別することができます。 大型のものはフェアグラウンド・オルガン、ダンスオルガンと呼ばれ、ドラム、シンバル、カスタネット等の打楽器や、指揮をするカラクリ人形をつけたもの等があります。メリー・ゴーランドやサーカスのBGM用として使われました。 中型のオルガンは手押し車に乗せたり、ベルトで肩にかけて運搬し、客引き用として戸外で使われていたためにストリート・オルガンと呼ばれます。小型のオルガンは家庭用に作られました。 現在でもヨーロッパの街角で、ストリート・オルガン弾きを見かけます。オルガンがどんなに大切にされ、人々に伝えれ、愛好されてきたかを物語っているようです。
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