鹿児島県


 その他

 1.斎(とき)
  斎は、「とき」と読みますが、この斎は、 法事の後の食事のことだそうです。
 そもそも斎(とき)とは、仏教の修業者が正午以降は食事をとってはならないこと、また在家の信者の方も毎月8日14日15日23日29日30日のこの六つの日は精進する日として、八つ  の戒めを守っていたことに由来するそうです。
 ところで、私の田舎(鹿児島)では、「やけどっ」といって年に何回か(いつだったか今では思い出せません。)蕎麦をうって食べる習慣があります。その「どっ」は、「斎(とき)」のことだっの  でしょうか。「とき」を鹿児島弁では、「どっ」と言わないこともありません。
  この「やけどっ」の日に蕎麦を食べることは、特に宗教的なイメージは、ほとんどありませんでした。
  
 2.呪い(まじない)
  私が、小学生位の頃に顔に「できもの」が出来ました。病院へ行くほどのものではなかったのですが、祖母の友達のおばあさんがお呪いをしてくれて「できもの」が治ったことがありまし   た。お呪いをした時期が治りかけで、たまたまお呪いが効いたように感じたのかもしれません。
  その、おばあさんが「刃物を貸してくれ。」と言うので、近くにあった「はさみ」を渡しました。その「はさみ」に、お墓に供えた花筒の水を「はさみ」につけ、何かお呪いを言いながら、顔をな  ぜるような仕草をしました。その後、数日でその「できもの」が治りました。
  鹿児島民俗植物記によると「ヒガンキ」の茎葉を炊いてその煮汁で牛馬のダニ退治をする。」とあります。この葉の汁には殺菌作用があったみたいです。先人の知恵には感心させられれます。

 3.ニッケイ(ケセン)
   庭先にケセンの木が生えていました。
  いまでは、その木は枯れてしまいありませんが、ケセンの木の葉っぱで団子を包むと葉の芳香が団子に移ってとてもよい味になりました。
  5月の節句の時期には、この「ケセン団子」を夫々家でつくっていたのですが、いまは無くなったのでしょうか。田舎のお菓子屋さんでは郷土のお菓子として今もつくっているかも知れま  せん。  
   また、このケセンの木の根っこは、子供のおやつとして小さいころしゃぶっていた思い出があります。根っこの皮の部分がいわゆる「ニッキ味」の風味がありました。しかし、食べ過ぎる  と目に悪いとありますが、詳細は分かりません。

 4.アサガラ
  アサガラでお盆のお精霊様(おしょろさあ)の箸をつくる。お
精霊様にお膳を出すとき、このアサガラでつくった箸を一緒に供える。

 5
.かからん葉団子(だご)
  
五月の節句の、お菓子といえば・・・、やっぱり、「柏餅」ですよね!
 
でも、鹿児島では、「かからん葉団子」(方言で『だご』) が、「端午の節句」菓子として、有名です。
 
そんな鹿児島でも、お菓子屋さんに並ぶ、「柏餅」は、今では、ポピュラーになりましたが、本来、「柏餅」は、鹿児島にはなかったものです。
 「柏餅」というものは、東日本の文化です。
 
西日本(九州)には、柏の木、自体が自生していなかったため、柏の葉、自体ありませんでした。
 
私の田舎、鹿児島の各家では、この、「かからん葉」を、山から採ってきて、各家で、『だご』を作っていました。
 
福井県でもサルトリイバラを柏餅の葉の代わりに使って端午の節句の団子をつくっていたと聞きますが、見たことはありません。
 
サルトリイバラを使った団子をつくっているところはあるのでしょうか。?
 
「かからん葉団子」は、あずき餡やヨモギ餅をかからん葉で(サルトリイバラの葉)で、両方向から包んで、蒸したものです。

 この写真(左)は、一般的な「柏餅」で、写真(右)は、「かからん葉」です。 



6.イコモチ(炒り粉餅

 
鹿児島の、端午の節句のお菓子に、イコモチ(インコモッツ)があります。
イコモチは、一般の、菱餅に相当します。
食感は、冷めた餅を食べているような感じで、米の自然の甘みがあったように思います。
炒った米の粉を練り合わせて、菱形やさまざまな形に作ります。
このとき、着色剤を混ぜて、きれいな色合いに仕上げます。(家でつくっていたものは、真っ白だったと記憶しています。)
私の小さいころは、各家庭で手作りをしていましたが、現在では、手作りする家庭は、めったに無くなりました。


7.アクマキ(あっまっ)

 五月の節句の食べ物として、鹿児島では、アクマキが有名です。
一般には、粽(チマキ)に相当するものだと思います。
もち米を一晩、灰汁(あくしる)に漬けたものを、孟宗竹の皮に包み、孟宗竹の紐で結び、数時間、炭汁で煮ます。
アクマキを作るときは、事前の準備が必要で、孟宗竹の竹の皮を、竹山から拾ってきて、水にさらしておきます。
しかし、現在では、アクマキ用の竹の皮も市販されています。
皮を開くと、米は飴色にとけて、独特の灰汁の強い味で、輪切りにして、黒砂糖、白砂糖、きな粉等につけて食べます。
長期間の保存がきくため、保存食としても有効です。
たくさん作って、家の中につるしておき、必要なときに取り出し、食べました。
灰汁は、固い雑木の灰、特に樫の木の灰が最高とされていましたが、現在、木を焚くカマドがなくなってしまったので、なかなか入手が
難しくなっています。
灰汁も最近では、市販されているのではないでしょうか。
アクマキ自体が、市販されているので、各家庭で作ることも少なくなってきているのが、現状かもしれません。

8.ケセンダゴ

 鹿児島の実家の庭先に、2本のニッケイ(ケセン)の木がありました。
今日で、四月も終わり、明日から五月となります。
五月といえば、五月の節句がありますが、5月の節句の餅を、この葉で包んで蒸し団子を作ります。
スーパー等で売っている、柏餅の「ニッキ」バージョンというような感じです。
葉の芳香が、団子に移って、とてもよい味となります。
根は、子どもらのおやつ?・・・
根の皮をしゃぶっていると、「ニッキ」の味がします。甘くない、ニッキ味の飴の感じです。この季節になると、ニッケイ(ケセン)の木の香りが、漂って来そうな感じがします。

9.下駄歯(ゲタンハ)
 

 鹿児島に昔から伝わるお菓子に「げたんは」という、黒糖を使ったお菓子があります。
「げたんは」とは、鹿児島弁で、標準語にすると、「下駄の歯」の意味です。
写真で見たら分かりますが、お菓子の形が「下駄の歯」に似ていることからこの名前になった模様です。その昔、甘いものが贅沢品であったころ、黒くて台形の変わったこの菓子を泥に塗れた下駄の歯に結び付けたのはいかにも鹿児島らしいとよく言われます。最近は、福井県内のスパーでもたまに見かけることがあります。その都度買って、懐かしく味わっています。

 

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