ケロロ西遊記パロ―第二章―

その@ 緊箍児

「全く…何故俺がこんな物をしなければならんのだ?」
悟空はイライラしていた。今、彼の頭には金色の輪がはまっている。この輪は緊箍児といい、『緊箍呪を唱えるとはめている者の頭を締め付け、また、一度はめると、製作者以外は絶対に外せないという優れもの(三蔵談)』である。
 何故、悟空がそのような輪を付ける事になってしまったのかというと…



 ―――三日前、悟空を連れて、三蔵は山道を歩いていた。

 山の中腹に差し掛かった頃、いきなり目の前に六人の山賊が現れた。山賊が武器を手に襲い掛かってくると、悟空はブンッと如意棒を振る。山賊は一瞬で全滅してしまった。
 三蔵はすぐさま悟空に言った。
「何でもかんでも暴力で解決するなどダメであります。お前も仏門に帰依した身、少しは自覚するでありますよ!」
だが、明らかに仏門に帰依してなさそうな三蔵が言っても説得力がない。口論(というより喧嘩)は、次第にエスカレートしていき、最後には悟空が三蔵を置いて消えてしまった。

 しかしその後、三蔵がその場で進まずにいると、反省した悟空が帰ってきた。三蔵は、『仲直りの印に』と言って、明らかに怪しげな金の輪を差し出す。悟空は全力で拒否したが、三蔵が無理やり被せてしまった。そして目をつぶり、何やら念じ始めると…
 ――突然、悟空の頭に激痛が走った。悟空は悲鳴をあげた。
「うぐ…ぐあああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!!あ…頭がぁああ……!!」
三蔵が念じるのを止めると、輪の締め付けはピタリと止まった。しかし、まだ頭はズキズキと痛む。
「…御師匠、こんな物一体どこで手に入れたんですか……?」
悟空が呻くように言うと、三蔵はニヤリと答えた。
「お前がどこかに行ってしまった時に、観音菩薩様から頂いたのでありますよ。さすがは観音様であります。効果覿面でありますな♪」
ゲーロゲロゲロ…と笑う三蔵。その様子は、どこをどう見ても高僧などには見えなかった。

三蔵曰く、
「これから、お前が我輩の言う事を聞かない時は、緊箍呪を唱えるでありますよ。」
だそうだ。
『せっかく反省して自分から戻ってきたのに、この仕打ちは無いのではないか…。あのビン底メガネ、こうなる事を見越していたんだな!くそっ…!!』
悟空は心の中で舌打ちした。その気持ちを見透かしてか、三蔵はこう言った。
「観音菩薩様を倒そうとか考えても無駄でありますよ?緊箍呪を開発したのは観音様でありますから…」
「それ位わかっています!!」

 こうして、悟空の頭には緊箍児が輝くことになったのである―――

 現在、三蔵一向(…といっても二人だが)は、再び山を越えようとしていた。もう少し行けば村が見える頃だろう。すると、複数の足音が近づいてきた。
「ああーっ、人がいらいらしているときに…!またか!!」
悟空の察した通り、現れたのは山賊どもだった。
「おい、そこの坊主と猿!荷物おいていけ。さもないと、叩っきるぞ!」
頭らしき男がどなる。悟空はキレる寸前だった。
「御師匠、こいつら殺してもかまいませんよね?」
「懲りない奴でありますな…。緊箍呪唱えるでありますよ?」
「…では殴って半殺し、もしくは、4分の3殺しでいいですか?じゃないと俺の気が済みません。」
「悟空、山賊であっても人は人。限度をわきまえるであります!」
「…了解……!!」
 一方、話が長くなり、完全に無視されていた山賊どもは、もう我慢できなくなった。
「おい!さっきから何をごちゃごちゃ…」
五月蝿い…!少しは空気を読めッ雑魚どもが!!
せっかくの台詞も、怒りを爆発させた悟空に遮られ、哀れな山賊どもは全滅したのだった。まあ、死んではいないが。
「あーあっ…手加減しろといったでありますよ!まぁいいけど、どうせ雑魚キャラだし。」
法師に、そして登場人物にあるまじき台詞をケロリと言い放つ男。それが三蔵だ。
 その時、
「…あっあの!すみません!」
声と共に、ガサガサと茂みから地味な顔立ちの男が出てきた。
「…どちら様でありますか?」
「わたくし、この先にある高老荘という村の者で、高正と申します。先ほど、そちらのお弟子さんの強さを目の当たりにし、お頼みしたい事があります。」
そこまで言うと高正は、二人にひれ伏して言った。
「どうか、翠桃お嬢様を救ってください!」
「はいぃっ?!」

                              …第二章Aに続く