●県議会における反対地権者の発言(原稿) 
                                            

                               長文ですが、正確な理解のために全文を掲載しました。

    私たちは、なぜ空港に反対しているのか
  
     平成13年3月13日  福井県議会・総合交通対策特別委員会  参考人 長谷川 静雄

 福井空港拡張の不当性、欠陥性について
 

 この度、福井県議会・総合交通対策特別委員会によって、福井空港問題で、初めて地元住民の意見聴取の場を設定されましたが、まことに時宜を得たご発議であり、意義あるご決断に対し、心から感謝と敬意を表するものであります。いま国の第七次空港整備計画のタイム・リミットを目前にして、福井空港問題は県にとっても、私たち地元住民・地権者にとっても、いよいよ「待ったなし」の最終局面を迎えたのであります。そこで私たちは昨年以来、県議会における空港論議の動向に重大な関心をはらい、各委員会での議事録を詳細に拝読しながら、その対応について真剣に検討してきたところであります。
 昨年の12月県議会で栗田知事が表明されているように、「第7次空整」の中で地権者同意取り付けの最終期限は、本年五月までか、遅れても8月までであり、今や空港問題の決着はカウントダウンの段階に突入しているのであります。私たち地元住民・地権者は、これまで16年間の長い年月空港反対一筋に頑張ってきたのであり、残されたわずか半年や一年の期間の中で、絶対に空港に同意することはありません。私たちにとっては、もはや時間との戦いに過ぎず我慢の時なのであります。したがって、地権者同意100%が前提条件である国の航空法に基づく「空港設置変更許可申請書」が提出できないことは、決定的事実であると断言できるのであります。今議会の開会冒頭に、栗田知事は厳しい地元状況を知りながら「空港同意に向けて全力を挙げる」と言明されていますが、相変わらず住民感情を配慮しない硬直発言は実に残念であります。原発「もんじゅ」の再開問題で示されたような「県民の立場に立って判断する」という知事の良識が、こと空港問題に関する限り、なぜ住民の立場や県民の視点に立たれないのか、大きな疑問を感じているのであります。弱者である孤立無援の私たち地元住 民・地権者は、県政の最高チェック機関であり、県民の代表である県議会のご英断に期待する以外道はないのであります。私たちは今回初めて行われる県議会での意見聴取の場を”千載一遇”の機会として、県に対するこれまでの不信感や怨念だけの感情論ではなく、客観的見地に立って「現空港拡張・ジェット化計画」の不当性、欠陥性をあらゆる角度から論証し、あくまで反対していく姿勢を明確にして、委員会諸先生の高邁、適切なご判断を仰ぎ、私たちの16年に及ぶ謂われなき苦悩や閉塞状況を是非とも解消していただきたいと、心から念願する次第であります。

  意 見 発 表

1.村を二分して何が空港なのか

 ご承知のように、昨年最後に残った空港建設のカギを握る地権者集落、坂井町東長田区における県の総論同意取り付け手法は、実に乱暴極まるものでした。栗田知事が8月中旬までに同意を得ると明言してきた手前、いろいろな裏面工作を展開してようやく9月24日に至って、知事出席の区集会を機会に開会中の9月県議会にアピールするように「事実上の総論同意」なるものを演出させたのであります。しかしその決議の際には反対区民は一斉に退場して、その後の区集会を一切ボイコットしている異常事態が現在も続いているのであります。
 村(ムラ)は群(ムレ)が語源であると言われております。集落には長い歴史があり、多少の争いはあっても伝統と連帯感の中で、お互い肩を寄せ合って生活してきたのであります。今その村の中で区民が反発し合う、荒涼とした空気が漂っているのであります。このような不幸な状況は「空港」という外的要因がもたらした人災なのであります。行政がここまでやって良いのだろうか。私は空港の是非よりも、この様な地域破壊の結果を最も怖れていたのであります。ここまで地元住民を追いつめる空港の必要性、公共性は一体何であるのか。本来地方自治の精神は、あくまで住民の意思を尊重し、住民本位の行政が基本理念であるはずなのに、平気で村を二分して、空港を造ろうとする。県の非情な行政姿勢にがく然としたのであります。 今年に入って、県は地権者同意に向けた、体制強化のため、庁内に福井空港整備推進会議を立ち上げ、過去に空港事務所に勤務したOB25人を配置し、「地元対策部」を発足させ、さらに空港事務所職員も新たに6人増員して35人体制にしたのであります。県にとって、県政最大のプロジェクト、空港不退転のシフトかもしれませんが、地域の中でますます亀裂 や混乱が拡大される局面が強く懸念されるのであります。


2.かつての県と反対同盟の「対話」について

 今になって考えると、かつて栗田知事が三選直後の平成7年6月県議会において、これまでの推進一辺倒の姿勢を転換して、突如として反対同盟との対話路線を表明した背景には、当時国の空港調査費がついたものの、地元の反対が強固で3年連続して予算執行できず、国に予算を返上する最悪の事態に追い込まれた状況があったからであります。
 ところが県は対話に当たって、「話し合って理解が得られない場合、計画全体を含め見直しを行います」と知事署名の公文書で確約しておきながら、平成8年5月から始まった3回の『対話』の中で、一方的に現空港拡張計画を全面に出してきて、反対同盟に容認させようとする露骨な姿勢を示し、折角の対話が決裂してしまった経緯があります。「空港問題の原点に立ち戻って、誠心誠意話し合いを行います」という知事の約束は、いとも簡単に反故にされたのであります。しかも問題なのは、知事が反対同盟に『対話』を呼びかけた時点で一方の推進応援団である経済界や各種団体に対し、「反対同盟との対話は、空港前進のための決断である」と堂々と説明していることであります。このような欺瞞に満ちた対話姿勢は、空港問題で行き詰まった県の苦し紛れの策略であり、”押しても駄目なら引いて見よ”という手法に過ぎなかったのであります。表面的に対話路線を打ち出して時間を稼ぎながら、その後の5年間で飲食接待や高額な補助金攻勢によって、着々と地元集落を切り崩してきたのであります。真摯に対応してきた反対同盟に対する重大な背信行為であり、結果として同盟組織は完全に分断 されてしまったのであります。『対話』の名を借りた卑劣な謀略であったと言っても過言ではなく、一片の誠意も認められないのであります。信頼のないところに理解はないのであり、現在再編された反対同盟に結集する人たちは、少数精鋭で反対意思はますます強烈であります。


3.”始めに現空港拡張ありき”の不当性

 県の”始めに現空港拡張ありき”という一方的決定と、問答無用の高圧的な推進姿勢に終始してきた理念なき空港計画は、必然的に16年経った現在も停滞と混迷の状況が続いているのであります。長い年月地元に受け入れられない計画は、計画自体に不当性と欠陥性がある証左であります。 しかも最近発表された1、250億円という莫大な周辺整備を含めた空港建設費や、毎年4億円近い赤字が見込まれる空港が、また福井県の最北端に位置して、県民全体の利便性を考えない空港が、なぜ福井県の社会資本の整備として必要不可欠なのか、全く説得力がないのであります。また現空港周辺の現況は、30数年前の開港当時と一変しており、県都福井市のベッドタウンとして発展してきて、春江町、坂井町とも住宅密集地となり、加えて学校、病院や役場などの公共施設が集中していて、もはや空港適地でないことは誰が見ても一目瞭然であり、むしろ移転を考えることが先決条件であります。
 ちなみに、沖縄県の石垣島空港は、市街地近郊にあるため、騒音と危険を避けて、移転する計画であり、全国どこへ行っても最近の空港造りは住民に迷惑をかけない、海か山の中に設置しているのがすう勢であります。福井県の場合、現在そこに空港が存在するからという理由だけで拡張し、ジェット機を飛ばそうとする、無謀極まる住民無視、環境無視の行政感覚や空港必要論はどうしても理解できないことであります。


4.「空港将来ビジョン」に対する疑問

 県では、空港計画発表以来16年経った今頃になって、それも県議会からの強い要請があって、急きょ初めて「空港将来ビジョン」なるものを策定し、発表したのであります。空港を中心にして更に3,400億円という膨大な事業費を投入し、将来の福井県の活性化、周辺地域の発展につなげると強調していますが、内容は県がすでに策定している中・長期計画を包括、網羅したものに過ぎないのであります。全く付け焼き刃的で整合性がない”絵に描いた餅”で実現する信憑性は皆無であります。ある地元集落で県が説明会を開いたところ、区民の中から「そんな夢のような説明はいらない。我々の地元の将来がどうなるのか説明せよ」と強く迫られたと聞いているのであります。
 「空港将来ビジョン」の破綻は、すでに関西新空港の事例で実証済みであります。あの人口規模と経済活動が盛んな大阪府でさえ、空港周辺地域での新たな産業立地は進まず、造成用地は手付かずのまま草ぼうぼうに放置されているそうであります。唯一、成功例とされていた佐賀空港の現状も産業の空洞化が進んでいるし、広島空港では工業誘致を当て込んだ造成用地もほとんど売れず、住宅団地も造ったが一期計画の9割が売れ残り、二期工事は未着手であると言われています。また、最近の毎日新聞で、岡山新空港周辺で岡山県が出資しているゴルフ場と保養研修施設を経営する第3セクター「岡山空港開発」が、利用が低迷し負債約100億円を出して倒産に追い込まれたと報道されております。
 この様に、先発地方空港の現況は軒並み惨憺たる状態であり、空港周辺地域の経済発展はバラ色の幻想に過ぎないことを具体的に証明しているのであります。日本福祉大学の森靖雄教授は、”地域経済をゆがめる地方空港の現状”と題する講演要旨の中で「地方空港による地域経済発展論はもともと幻想論。成功した事例は少なくとも日本にはない」また、「福井空港の拡張計画は、半永久的に県民生活を圧迫する”お荷物”になる」と述べておられるのであります。 県では、空港は人・モノの盛んな交流が図られて福井県の将来発展に多大に寄与すると宣伝していますが、1日に1便や2便の東京運航だけで過大な期待は無理であります。かつて私たちは長野県の松本空港を視察したことがありますが、ジェット機が飛び立った後のターミナルビルの館内に人影はなく、まるで田舎のバス停のような情景が鮮やかな印象として残っているのであります。
 

5.福井空港の「中止」と「保留」について

 不思議なことは、昨年の政府与党による公共事業の抜本的見直しの中で、福井空港が「原則中止」の対象に入り、私たちは当然のことと胸をなで下ろしたのも束の間、運輸省の中止決定が突如覆されて全国で唯一「保留」となった経緯であります。 栗田知事の驚くべき政治力は、結局、原発「もんじゅ」再開問題のカードであったとマスコミなどで報じられ全国的な論議を呼んでいるところであります。私たちが危惧していた通りの政治決着となったことは大変残念であります。しかし果たして福井県にとって賢明な選択であったのかどうか、今後大きな問題点として残ることでしょう。 国会では”あっしには係わりのないことでござんす”という台詞で有名な木枯らし紋次郎役を演じた元俳優、中村敦夫参議院議員が中心となり、超党派の国会議員96人が「公共事業チェック議員の会」を結成して福井空港の保留は「八百長決定」であると、次期国会で徹底追求する構えを見せているのであります。地元での地権者同意の成否と国会での追求と合わせて、福井空港問題は予断を許さない重大な岐路に立っているのであります。 

6.空港問題は地域破壊の歴史

 福井空港問題の最大の不幸は、県の恣意によって翻弄されてきた地元住民であります。空港ゴリ押し行政で、私たちの周辺でどれだけの人たちが反目し、対立してきたことか。地縁血縁の絆が分断されてきたことか。空港問題の長い歳月は地域破壊の歴史なのであります。外圧である空港問題によって、これまで平穏無事な”ムラ社会”の中に、孫子の代まで引きずっていく大きな禍根が生じてしまったことは返す返すも残念であります。この「人災」ともいうべき現実を今後どのように修復することができるのか。県はこの結果責任をどう償おうとするのか。痛切な思いで改めて問いかけたいのであります。                                             以 上